少年敗走記

脳みそをさらけ出すダンスホール。

トラックラグーンにゴースト浮遊せしや?

P-Modelメンバーの一人、横川タダヒコ氏のアルバムに収録されている「トラック・ラグーン」の考察をしていく。

まず、この曲は調べても成立した詳細な背景や当時のP-Model、横川さん、作詞とナレーションで参加しているヒラサワの状況がわからない。

そもそも歌詞さえネット上にも存在しないので歌詞すら私が耳コピしたものを頼りに考察する。

歌詞には著作権があるため全て書き写すことはできないので、重要なところのみを記載していく。

 

そもそもトラック・ラグーンというのはトラック諸島の意味であり、現在ではチューク諸島と呼ばれている。かつて大東亜戦争中に日本軍が占領した南の島の一つであり、1944年に米軍の大規模空襲によりほとんどの船が轟沈したトラック島空襲があった。

 

「トラック・ラグーン」は横川さんのアルバム「two of us」に収録されており、このアルバムの発表が1990年。

この年はトラック島空襲から46年後であり、歌詞に何度も出てくる40年という数字と符合する(四捨五入したら50年だけど)。

 

歌詞を書き出した後参照しながら何度か聞いたが、この曲は大東亜戦争へのドキュメンタリー風回想録ではないだろうか。

先日の記事でも書いたがヒラサワの意味する幽霊=ゴーストは

現代人が切り捨ててきた非西洋的、非科学的な叡智

の意味を持つ。

とすると何度も出てくる実質サビの「トラック・ラグーンにゴースト浮遊せしや」はトラック諸島には史実から消されてしまった何か大切なものがまだ眠っており、それは陽の目を見ることなく成仏できぬまま彷徨っている、と解釈できる。

 

ロストフィンガーの男は傷痍軍人かもしれない。ファーイーストは直訳すれば極東であり我らが日本。

 

そして対比される時間軸が2つある。コンチネンタル航空では5時間で行ける距離を徒歩や超特急では40年かかる。

この2つのあまりに顕著な対比は何だろう。通常の方法では40年もかかるところをコンチネンタル航空に乗れば何と5時間で行ける。

ちなみにコンチネンタル航空は実在したアメリカの航空会社。2012年にユナイテッド航空と統合され消滅。

なので「トラック・ラグーン」発表時にはまだ実在していた。

 

調べてみるとトラック諸島への足は日本からの直行便はなく、トラック諸島へ乗り入れているのはユナイテッド航空(コンチネンタル航空)しかない。

経路として日本→グアム→トラック諸島とグアムを経由する。

ユナイテッド航空フライトプランを調べてみると

成田→グアム→チューク国際空港でかかる時間は17時間!

出発日時を変更して調べても大体17~18時間はかかる。ユナイテッド航空なら。

5時間ではたどり着けない。

 

.....こういう時は発想を変える。ストレートにその地までかかる時間ではないのか。

もしかしたらヒラサワは何かのドキュメンタリーを見てこの曲を作ったのかもしれない。(ドキュメンタリー嫌いとどこかで聞いたが)

その番組が5時間構成だったのかもしれない。

つまり、40年も前の歴史的な出来事を5時間で知ることができるといったような。

 

40年前の過去と5時間番組が放送される今日が出会う。(これが左耳を打つ40年のロングディレイと右耳を打つ5時間のショートディレイの対比)であり、「私のスケルトンを揺する二つの声」。

「両者の門出を祝う」今やっとトラック諸島の歴史が人々に知られ始めた。

「ヨーソロー」そのまま行け。

 

ちなみにディレイというのは空間系エフェクターでなにがしかの音にエコーを付けるものだ。このなにがしかの音はおそらく号泣の声。

歴史の上で響いた40年前の泣き声(それは日本兵のものかもしれないし残された遺族かもしれないし、はたまた現地の人のものかも)と今日5時間の中で再び聞こえた泣き声(生き残った傷痍軍人のものか)が右耳と左耳で同時に聞こえ私の中で出会う。

「ロストフィンガーのしぶき」は涙。

 

ちなみに3度も出てくる「母」。これは戦争という男性性への対抗かも。「然る母の秘めたる和合」から推測するに、戦争というのは男性性でありその名の通り争いで競争だ。その逆が女性性と共感。だから「母の秘めたる和合」

この秘めたるもまたヒラサワらしい。ヒラサワの歌詞にしょっちゅう出てくる夜や陰と似た意味で、この極めて男性性に偏った世界では先に述べた幽霊のようにくだらないと切り捨てられてしまうもの。

 

さて、ここまで考察してきたが未だ腑に落ちない点もある。

例えばなぜロストフィンガーの男がしょっちゅう出てくるにもかかわらず「指一本の生贄で保たれたファーイーストファミリーの美学」があるのか。

ファーイーストファミリーが皇族だとしたらロストフィンガーの男は指を全てなくしながらも大日本帝国と現人神を守り切ったということか。

いやそれではあまりにも思想が右に寄りすぎてヒラサワらしくない。

それともファーイーストファミリー(皇族)はたかだか指一本で支えられてしまうほど軽々しいものだ、ということか。今度はリベラルすぎるな。

ここはまだ不明だ。何か思いついたら追記するだろう。

 

最後にこれは歌詞の耳コピが単純に間違っているのかもしれないが「アフリカのウメルハバト」。

ウメルハバトというのは調べても何も出てこない。

ウメルハバト、ウメールハバト、ウメルハーバート.....。