鈴木達央さん朗読「高瀬舟」感想
声優さんが朗読するCDや音源は世間にいろいろありますが、古典を読んでくれているものはなかなかありません。
しかし、海王社文庫から出ている古典シリーズはたくさんの声優さん(男性のみですが)朗読してくれています。全文じゃないのが残念ですが。
文庫本に8mmCDがついており、僕の様な若造は「こんな小さいCDどうやって聞くの?」と始め謎でしたがパソコンであっさり聞けました。
さて、たっつんといえば僕の中ではロックなイメージが強い人です。うたプリとかね。Freeのまこちゃんみたいなかわいい声は珍しいらしいですが、この朗読はこっちの優しく、囁くタイプの読み方です。ただし低音。
声優さんの朗読には二通りあって、第三者として「読み上げる」タイプ。アナウンサーというか、ナレーションっぽい読み方。もう一つが登場人物に感情移入し、声色を変えて喋る、いわゆる「演ずる」タイプ。
今回のたっつんは「演ずる」タイプの読み方。
この「高瀬舟」は主な登場人物が庄兵衛(喜助を護送する役人)、喜助(弟殺しの犯人)、弟、ばあさん。(ばあさんはしゃべらないのでおいておく)
この中で明らかに違う喋り方をしているのが喜助。
喜助の喋り方がゆっくりで優しいのです。「わたくしわぁ」のように小さい「ぁ」に低音が残る感じです。
ただ、少し気になったのが「し」の音の時空気が「ひゅっ」と鳴る点です。
もともとサ行の音は抜ける性質を持つので(人力だと最も取りにくい音素)当たり前なんですがちょっとその鳴り具合が強いかな、と。
ただしそれを補う程に落ち着いた品のある声だと思います。
庄兵衛は役人らしく低音で張ったような、はきはき喋るのに対し、罪人喜助は総てを悟ったような、あきらめたような、ゆったりとした思い出すような喋り方。
こんな声で喜助を演じられるとどうしても喜助に味方したくなります。
バックの悲しい音楽とも相まってより切ない話に感じられます。
今まで聞いた声優さんの朗読の中でも1,2を争うほど惹きこまれる朗読です。
たっつん好きならもちろん、高瀬舟に興味があるなら文字で読むよりずっと頭に入ってきます。ゆっくりな喋りなので古めかしい日本語でも分かりやすいです。
目の前に護送される船が見えてきますよ、本当に。