少年敗走記

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NARUTOで最も悲しく切ないキャラクターはイタチではなくカカシである

「イタチじゃないの?一族皆殺しにさせられて里を抜けた犯罪者にならざるを得なかったんだから」

ってみんな思うでしょう?

 

でも、僕はカカシが最も悲しいキャラクターだと思います。

まずはイタチとカカシを比較してみると

・イタチ

元暗部メンバー。一族皆殺し。里とうちはの二重スパイ。

 

・カカシ

元暗部メンバー。スリーマンセルの仲間(リン)殺し。父親が自殺。

 

こうなります。この二人の共通点は「仲間を手にかけた。仕方のない状況で」だと思いますが、決定的に違う点があります。

 

それは、イタチにはサスケがいたこと。

 

イタチは一族を手にかけたといってもサスケだけは殺せませんでした。

そしていつの日か、サスケに殺されるために生きていました。

ある意味、イタチには未来があったのです。成長したサスケと闘い、サスケを呪印から解放し殺されるという未来が。たとえその未来の先に自らの死が待っていたとしても。

イタチは殺した一族や父母、シスイより、生きて成長して自分の元へいつの日かやってくるサスケを見て惨劇の夜の後を生きていたでしょう。

 

しかし、カカシにはもう誰もいません。

父親を自殺で失くし、忍界大戦でオビトを失い、里を守るためリンを殺し、師であったミナト先生は九尾のために死ぬ。時系列ではおそらくこの順だと思います。つまり、ナルトが生まれた日カカシは総てを失ったのです。

 

だからカカシには未来が無い。永遠に過去を向いて生き続ける人です。

覚えてますか?カカシが初めて第七班のスリーマンセルにやってきた日、全く覇気がなかったというか、やる気ゼロだったのを。

カカシは最後の大切な人、ミナトを失ってからナルトが第七班にやってくるまでの十二年間を死んだように生きていたのではないでしょうか。

ちなみにカカシがナルト達以前の下忍を全員不合格にし続けた理由ですが、彼本人は「仲間を大切にしない奴はルールを守らない以上のクズだから。」と言っていますが、僕はそれだけではないと思います。

自分のように大切な人を失くす子をこれ以上増やしたくないというカカシ自身の願いでもあったと思います。

 

かつ、カカシがいつも遅刻してくるのはオビトの記念碑に立ち寄っているから。

これを踏まえてオビトに言われた「仲間を大切にしない奴は」のセリフ、「バカだった自分を戒めたくなる」を考えてみるとやはりカカシの心は過去にあると思います。

 

しかし、実はカカシもナルトに助けられている一人ではないでしょうか。大切な人をすべて失い一人になっても似た境遇のナルトがいる。ナルトは常に前を向き続ける人です。カカシはそこに未来を見出したのではないでしょうか。たとえそれがかつての父やスリーマンセルと過ごした幸せな過去にはおよばなくとも。

 

だからサスケの里抜けの前、サスケの復讐を止めたのではないでしょうか。サスケはナルトのライバルであり、だからこそ心の支えだから。

どうみてもカカシのガラではないでしょ?人のことに首突っ込むなんて。

 

でも、カカシとサスケもまた決定的に違うんですよね。イタチにはサスケがいた様に、サスケにもイタチがいる。復讐相手がまだ生きている。イタチを殺すために生きるというのがサスケの希望だったでしょう。

 

一方カカシは、仲間が死んだのは忍界大戦のため、九尾のせい。

復讐相手がいないのです。戦争という概念に復讐はできない。戦争相手だって仲間を失い苦しんでいることはカカシも良く分かっている。九尾はナルトの中にいるのでやっぱり報復はできない。

明確な相手がいないからカカシは復讐には走れず、やりきれない思いを抱え続けるしかない訳です。

 

イタチが最も幸せだったころはおそらく、子供時代、アカデミーから帰ってきてサスケと遊んでいたころだったでしょう。

イタチはその幸せは失くしますが、生き残ったサスケに殺されるという未来があった。彼にとっては希望です。

では、カカシが最も幸せだったころはいつか。父親サクモさんが生きていたころ。オビト、リン、ミナトでスリーマンセルを組んでいたころ。

それをすべて失い、カカシには希望がない。かつ、カカシはまだ生きている。

 

未来への希望が無い点においてはネジも一緒です。同期が結婚し、子どもを育て、年を取っていってもネジは永遠に17歳のまま。

 

でも、ネジやイタチはもう死んでいるので希望が無くとも本人には関係ありません。

カカシが悲しいのは昔の幸せは二度と取り戻せない、これからの未来で得るかもしれない幸せも過去の幸せには及ばないとわかっている。分かっているのに生きていかねばならないからです。

 

一度、カカシが死の世界に足を踏み入れたことがありましたよね。神威の使い過ぎでチャクラ切れを起こし、命に係わった時です。

死の直前の回想で思い出したのは誰か。オビトです。

死の世界の入り口でカカシを待っていたのは誰だったか。サクモさんです。

サクモさんの発言からカカシの母はもう亡くなっていることも分かりました。

死の瞬間というのは一番その人の本質が出る場面だと思いますが、そこでカカシが思い出したのはすでに過去の人ばかり。

 

そして死んだとばかり思っていたオビトとの再会。本来なら失くした幸せが思いがけず帰ってきた、カカシにとっては救いになるはずでした。しかしそのオビトを殺さなければならない。過去のオビトを守るため、里の未来のために。

いや、里のためというよりはナルトとその仲間たちのためでしょう。まさしくアスマの言う「玉」を守るためです。たとえそれがカカシ自身の幸せではないとしても。

 

また、クライマックスでの無限月読。

カカシはこれにかかりませんでしたが、かかっていたら間違いなくサクモさんやスリーマンセルで過ごした幸せな過去を夢見ていたでしょう。

もしかしたら、カカシは無限月読にかかることで戦意を喪失していたかもしれません。

僕は、カカシは無限月読の中で生きていった方が幸せだったと思います。それを選択せず、戦い続けたカカシは間違いなく強い人です。

強いからこそ危ない。一度死のうと決めてしまったら、彼は迷わず死ぬでしょう。強いから迷わないのです。ためらわないのです。

 

つまり、カカシはもう過去と同等、それ以上の幸せは望めない、幸せの絶頂期は過ぎてしまった。

それなのに生きていかねばならない。

ある意味死ぬより苦しいです。

これが僕がカカシがNARUTOで最も悲しいキャラクターだと思う理由です。

 

このことを踏まえるとBORUTOで出てくるカカシの姿にも納得がいきます。NARUTO世代が結婚し、子どもを作っても、同期のアスマが紅と結婚しても、カカシは結婚しません。

なぜか?幸せだった過去に囚われているから。

結婚して子供をつくるというのは未来への希望を持っていない人間にはできません。

子ども=玉は未来そのものだからです。

 

おそらくカカシはこれからも結婚しないでしょう。それはそれでいいとして、僕が恐れているのはカカシが自殺するのではないかということ。

自殺というよりはわざと危険な任務につくのでは、ということ。

 

カカシが今日まで生きてきたのはオビトの目となって里の未来を見据えるため、そしてナルトに希望を見出し、守りたかったから。

 

今、ナルトは火影となりもう守られる必要はなくなりました。オビトを倒し、写輪眼を返した以上、もうオビトの目になる必要もないのです。

カカシは里の平和と引き換えに人生の目的を失いました。そして自分にとって大切な人たちはみなもう死んでいる。

 

どういうことだってばよ?

つまりカカシはもう生きている理由がない。カカシにとっては、です。

誤解を恐れずに言うと、カカシにとっての最高の幸せは失くした過去である以上、死んだ方が幸せであるということです。

 

NARUTOはある意味KAKASHIであったと思います。

限月読というクライマックスでかつての仲間と対峙するカカシ。NARUTOのもう一人の主人公はカカシであったといえます。

そしてNARUTOの終わりはナルトにとっての始まりでカカシにとっての終わりです。

ナルトは見事戦争を終わらせ火影となり、これから里を守っていく。始まりです。

一方、カカシは戦争が終わり、かつての仲間オビトを葬った。終わりです。

 

ナルトが火影としてスタートを切った時、カカシの役目は終わったのです。

もうカカシに心残りはありません。

 

でも、願わくばカカシ、余生をゆっくり過ごしてほしい。過去に囚われたままでもいいから、新しい木ノ葉の里を見守って平穏に生きてほしい。

やっと平和が来たのだから。

 

カカシはわずか12歳で上忍になるほどでしたから写輪眼がなくてもかなり有能でしょう。

ナルトの世界で有能な人はたいてい幸せに生きていません。イタチしかり、ネジしかり。でもサイだけちょっと例外です。

 

これは単なる僕の考察ですが、カカシの救われた姿がサイなのではないでしょうか。

サイは暗部養成部門「根」のシステムの中で育ち、危うく兄のシンと殺し合いをさせられそうになりました。本当に殺し合いをしたのか、あるいはサイの言う通りシンは病死したのかはわかりませんが暗い世界で育ち、感情を失くしたのは確かでしょう。

しかし、サイはナルト達と出会い、過ごしていく中で人間らしさを取り戻し、BORUTOでは結婚までしています。

 

サイとカカシの違いは何なのか。

二人は同じ元暗部ですが、サイはナルトに出会うことができました。カカシにはナルトのように辛い過去に寄り添ってくれる人はいませんでした。カカシの仲間は皆死んでしまいましたから。

 

そして何より、サイは根を「抜ける」ことで苦しい過去を置いてきたと解釈することもできます。この点はイタチも里を「抜ける」ことで暁という新しい居場所を見つけたともいえます。

しかし、カカシの苦しみはこの世界そのもので起きたこと(忍界大戦、父の自殺、九尾襲来)なので「抜ける」ことはできません。

この世界から抜けるには死ぬしかないですから。

この決定的な違いが、サイは過去を振り切り新しい希望、玉=いのじんを得て、カカシが過去に囚われたままである理由だと思います。

 

以上、長々とカカシの考察でした。

BORUTOでカカシがどう活躍するのか、しないのかじっくり見ていきたいと思います。

個人的には温泉でのんびりするか、危険な任務に身を置くかのどちらかだと思いますが。