人力刀剣乱舞と朗読から人力
utau式の人力をいじり始めておそらく半年?ほど。
主に歌わせているへしろいどと兄者ろいど(髭切)について書こうかと。
この二人、声のタイプが真逆で使えば使う程おもしろいんです。
まず、へしは低音が得意、声質がもともとちょっとざらついている(utauにのせたときそこまでの低音でないのにびーっというノイズがのる)、高音が辛いかな?という印象。とにかくざらつきやすいです。それだけ低音が豊かだってことなんですけどね。
良い面としては「ですね」の「ね」のような半分囁きの音源でもノイズが乗りにくい点。
髭切は女性ボーカル曲を原キーで歌えるほど高音が得意で綺麗に出る、声質がクリアなのでフラグのHを設定しなくてもざらつきません。ただし低音はこもりがちというか、兄者らしさがなくなります。
かつもともと声質がウィスパーなので囁きセリフからとった音素はノイズだらけです。特に「だね」の「ね」なんかはいくつ切り出しても使えるのはそのうち2,3個...
それと、早口のセリフは文字通りに発音してなかったりします。セリフ途中の「だ」がセリフで聞くと普通に文字通りしゃべっているように聞こえるんですが、一音ずつ切るとどうしても「で」にしか聞こえない、なんてこともままあります。
もともとへしがはっきり喋るのに対し、兄者は話すスピードも話し方もゆっくり、ゆったりなので一音ずつはっきり発音してないんですね。
若干「ヤ行」が苦手かな?
でもロングトーンで兄者らしい平安貴族の様な?アクセントの音素が使えると一気に兄者らしさを主張できます。
あと何もフラグをいじらなくてもへしよりきれいに歌います。
ニコ動で刀剣乱舞キャラの人力投稿数を以前調べてみたのですが、
へし(712)>鶴丸(609)>燭台切(476)>鶯丸(249)>兄者(186)
でした。まあへしが人気なのは知っていたんですが、やはり上位は織田、伊達のあたりだなぁと。倶利伽羅は調べなかったのですがきっと多いでしょう。
それにしても兄者の投稿数の少なさにびっくりしました。綺麗な高音だからぜったいみんな歌わせたいだろうな、と踏んでいたところに200いかないくらいの動画数でしたから。
あと意外だったのは一期一振の人力投稿数が195個。もっといくと思ってました。
鶴丸は共感できます。僕も一時期兄者と鶴丸、どちらをやろうか迷いましたから。鶴丸は兄者とは逆で綺麗でクリアな低音なんですよね。
さて、ここから刀剣乱舞の人力ではなく、声優さんの人力の話になりますが、僕は今声優さんの朗読から音素を切り出し、人力を作っています。
今挑戦中なのは神谷さん。乱歩の人間椅子の朗読のmp3を買い、それを刀剣乱舞と同じように切り出しているのですが、ひとつ刀剣乱舞の人力とは明らかに違う点に気が付きました。
それは、声に表情が無い。
刀剣乱舞はゲームボイスですから当然声に表情がついているわけです。兄者の「ゆったりすごそう」だったら明るい声で言っていますし、へしの「俺は強くなりましたよ」だったらドヤァ全開で言っているわけです。
ところが朗読の場合、登場人物のセリフもそこに完全に浸りきって読むわけではないですし(すぐに次の文章に行かなければいけないので)、ト書きの文章だってあります。
これを切り出して音楽として並べても棒読みの歌というか、どうしても歌っているように聞こえない。
朗読は当然神谷さんですからうまいのです。それを切り出して音符にしても感情がのっていないようにきこえるのです。
初期のボカロからさらに感情をなくした感じに近いです。
そう考えると声優さんというのはすごい技をお持ちなわけですね。ただ声を発するのではなく、声に表情をつける。そのプロたちだということが改めて実感できました。
その表情はたとえ人力utauでバラバラに一音ずつ切り出してもしっかりのっている。声の職人といったところでしょうか。
・・・やっぱり神谷ロイドをやりたかったらおそ松さんのチョロ松から切り出すのがいいのかもしれません。
VOCALOID声の話 KAITOをどう生かすか
今更なんですが、VOCALOIDの声のタイプの話です。
最近神調教の動画を見つけまして、それが
神無月pさんという人の「daze」です。
聞けばわかるんですが恐ろしいほどの調声で、まるで人間のプロシンガーが歌っているよう。この方はvsqxを配布してくださっているのでせっかくなのでダウンロードし、うちのボカロ達に歌わせて彼らの声の違いを検証してみました。
対象ボカロは4人。
鏡音リン、レンv4x、v4flower、KAITO V3です。
この中の誰かを(鏡音はペアですが)お迎えしようかなと思っている人にはちょっと参考になる内容かもしれません。
ちなみにボカロ使用歴
KAITO4年、他3人が2年です。
まずダウンロードしてきたvsqxをpiapro studioに放り込みます。
パラメータは音量以外いっさいいじっていません。
KAITOは原キーだと高音が辛そうだったので1オク下げ。
最初は一人ずつ聞いてみました。
やっぱり鏡音はPowerライブラリがこういう歌い上げるロック系には映えますね。他のserious,cold,sweet,warmでも試したのですがこもってしまってあまり聞こえませんでした。たぶんオケと合わせるとかき消されると思います。
flowerはこういうロックの為につくられたライブラリですから当然かなりロックっぽく歌い上げてくれました。4人の中で最もこの曲を上手く歌いこなしてました。
問題なのがKAITO。他のライブラリを聞いた後だと明らかに声が弱いのがわかりました。KAITOのライブラリは4種類あり、その中で鏡音のpowerにあたるのがstraightですが、powerに遠く及ばないほど声が優しいです。
この4人、声の弱い順で並べるとKAITO<<<リン<レン<flowerです。
試しにKAITOを他のライブラリとデュエットさせてみました。
まずリンと。
ボリュームが同じくらいでもまあまあ聞こえます。そもそも声質が全然違いますからお互いをかき消し合うことはないです。
次にレン。
レンとkaitoは発声の仕方は違うんですが声は似たタイプ。つまり喉を開いて声を出す女性声優さんの少年声と男性の声。
kaitoがオク下とはいえ同じ音量だとkaitoは歌詞が聞き取れないくらい聞えません。
さすがにレンをcoldやseriousにするとkaitoの方が目立ちますがそれだとロックとして成立しないのでレンの音量を8割くらいに落として合わせました。
一番大変だったのがflowerとkaito。
flowerは声質がレンと似ているので声もkaitoと被るところがあります。
かつ、flowerは声に張りがあって歌い上げるタイプ。kaitoと真逆なので一緒に歌わせるとkaitoはベースになってしまいました。「いる」ことがわかるくらいにしか聞えないのです。
さらに驚いたのはkaitoを原キーにすると最早歌っていることすら分からない。ミュートになってるのかと何度か確認しましたがフラグが動いてるんですよね。
kaitoの音量は常にマックスになっているのでflower側を落とすしかありません。
この二人はデュエットには向かないと感じました。
このボカロ達、それぞれ発声の仕方が違うんですよね。
声にパワーがあって腹から出している、歌い上げているライブラリがレンとflower。
どこかで「レンの発声はマイクなしで声を30m先に飛ばす歌い方」と聞いたことがありますが、まさにそうです。flowerはそれをさらに30mぐらい遠くした感じです。
まさに「歌い上げる」シンガー。
一方、リンとkaitoはマイクがあるのが前提の繊細な歌い方といってもいいと思います。リンはpowerのライブラリは確かに張りのある強い歌い方ですが、レンには及ばないと感じます。もちろんロックも歌うことができるのですがおそらくステージで歌ったらかきならされるギターに消されがちでは、と思える声です。kaitoはそれをさらに繊細にした感じです。
「歌い聞かせる」シンガーといったところでしょうか。
ところで、ボカロのパラメータにはダイナミクスというのがあります。これは主に発声を強くする、パラメータとして使われます。
じゃあ、このダイナミクスを思いっきりあげればkaitoだってロックを歌い上げられるんじゃ?と思いますよね。
ところが、このダイナミクスというのは簡単に言えば音量をあげるものです。
例えば「君がいた」という歌詞の「が」を強調したいなら「が」の音量をあげて主張させるのです。
音量を一瞬あげるだけですから声質は変わりません。
ダイナミクスをあげまくったところでkaitoの優しい声は優しいままです。決してflowerのような声にはなれないのです。
おそらく「声を変える」パラメータとしてはジェンダーファクターくらいしかないと思います。
これは結構わかりやすいパラメータで、レンで言うと上げると「レンの低音」になり下げると「ショタレン」になります。
kaitoだったらジェンダーファクターを上げて低音を強くすると少しはっきり歌う声になります。やりすぎると軍歌歌手みたいに・・・
これぐらいですね、kaitoの声を張があるように変えるのは。
じゃあkaitoはダメな子なのか?
いえいえ、全然そんなことはないです。
確かにパラメータを細かくいじる調声をやりたいなら当然ロックのほうがいいわけですからkaitoだと初心者には難しいです。
何をどうやっても「歌い上げる」ようには歌いませんから。
ロックをメインでやりたいなら断然flowerをおすすめします。レンも大丈夫。リンもレンよりは大人しめですがロックにも向きますよ。
kaitoはこの3人とは一工夫した調声が必要です。でもそれがのちのち他のボカロを調声するときに役立つと思います。
kaitoはv3なのでグロウルが使えません。かつ発声が弱い。
そういう時はパラメータとともに打ち込む歌詞にも一工夫します。
例えば「また明日の君が~」という歌詞の「明日の」の後に一瞬間を開け、次の「き」を強く発声させたいとします。
普通に打つと「の」の後に一瞬間があるにも関わらず母音の「お」が「き」の初めに発声されてしまい変なひっくり返りがあるように聞こえてしまう、ということがkaitoでは良く起こります。
つまり「また明日のっ、君が」と歌ってほしいのに「また明日のぉ君が」と歌ってしまうということです。
これがKAITOの声がしばしば能天気に聞こえる原因かも。
これを防ぐために「の」の一瞬を空白ではなくブレスで埋めます。そうすると「の」の後に間が空き、かつ「き」の発声が強くなります。「の」と「き」で完全に音が切れるのです。
ベロシティをいじらずにはっきり「き」と言ってくれるのでノイズにならなくてすみます。
これはkaitoユーザーでなかったら気づかなかったかもしれないテクニックでした。
このように新しい技術を自分で発見していくのが面白い人にkaitoはうってつけです。のんびりいろいろ自分で発見していきたい人にはおすすめですよkaito。
最後にこれは僕の感想ですが、彼はある分野では最強になります。
ボカロなので普通の男性が出せない音域だって出せるには出せるんですが苦しげな高音になります。
他のリンレン、flowerがらくらく歌いこなす歌でもそのままのキーだとkaitoには高すぎ、声が細く、無理しているように歌います。
その苦しげな高音は曲にあるジャンルにはマッチします。苦悩を表現するとかね。
見方を変えればこれは強みです。苦しげな高音は他の女声(レンも含め)ではなかなか表現しづらいですから。
叫ぶような苦しい高音って、悲劇を歌うにはぴったりなんですよ。男声は特に「何かあるな」と思わせる声だと思います。
結果、kaitoは何でもこなせるオールラウンダーではないですが、曲が優しい声質や苦しい高音にマッチすれば無双します。個人的には男声ボカロの中で最もバラードの似合う人だと思います。
苦しい高音で作り込んでいけば悲劇的なロックには似合うかも?
kaitoの可能性は無限です。
もしお迎えしたらどうぞ可愛がってあげてください。いつの間にか曲作りに欠かせないパートナーになります。
KAITO V3 本気で調声その1
今までもVOCALOIDの調声はいじることにはいじってたんですが、つい先日vsqxというutauのustにあたるものがあると知り、神調教の調声をDAW上で見てみました。
驚きましたね。
まずノートの分割が細かい。
「コンクリートが」が「こoouんくりitとoが」と打ち込んであってまるでutauの様。
ボカロはV3、V4あたりまで進化するとベタ打ちでも結構歌ってくれちゃうのでまさかここまでフリーソフトutauのように打ち込むとは想像してなかったです。
次に目についたのはやはり主にいじってるパラメータはダイナミクスとピッチ。
ダナミクスとは発声の強弱でピッチはそのまま声の揺らぎ。
ダイナミクスは上手く使わないと声が大きくなったり小さくなったりして不自然になんですがもっと難しいのがピッチです。
ピッチは下手にいじると音痴になります。
調声に慣れないうちはいっそベタ打ちの方がうまかったな、ってことになりがちです。
でもいじらないことにはいつまでたってもベタ打ちから脱却できないので・・・
それに歌声ライブラリの特徴も調声を左右します。
神調教師のvsqxを色々なライブラリに流し込んで分かったのですが、
やっぱりKAITOは声が優しすぎる。
僕が主に使っているライブラリは鏡音リン、レンV4X、v4flower、KAITO(V3)です。
KAITO以外パワー系のボカロだと感じます。
ロック系のvsqxを流し込んで聞いてみると前者3人がかすれたりいかにも「歌い上げている」感じで歌うのに対し、KAITOは何というか、ちょっと遠くで歌っているような良く言えば優しい、悪く言えば張のない声だなと感じます。
ボカロの調声を覚えたい人には向かないかもしれません。ダイナミクスをどういじっても張り上げる声にはならないですから。
でも好きなんですよね、この青い兄さん。
僕が初めて買ったボカロでstudio one とpiapro studioの区別もついてなかったころから一緒にDTMを始めた仲間ですからね。
ベタ打ちではじめて「らー♪」と歌わせたときの感動は忘れません。
それに彼の強みはやはり男声という点でしょう。レンは中の人が女性なので。
もともと声が高めで高音域も得意でかつ、男声なので低音が無理がない。こもらない。
男の子っぽい声の他のシンガー、レンやflowerはやはり低音が苦手だと感じています。胸で発声するこもった低音になりますね。低いからよけい聞き取りづらいし。
僕が兄さんを迎えたころはV3が最新だったのですがいまやV5まで出ているそうで兄さんの強みだった英語も歌える、は最早当たり前になりましたね。
ミクなんか中国語も歌えるし。
クリプトンでは失敗作扱いだった兄さん、V3まで出て結構出世しましたがもうこれ以降のバージョンは出ないのでしょうか。
V4、V5とか出たら何が追加されるんでしょうね。
中国語?もっとパワーのあるライブラリとか?
それだと他の男声ボカロとかぶるんでしょうかね。
宮野真守さん「孤島の鬼」朗読
海王社文庫から出ている声優さんが古典を読むシリーズ。
今回は乱歩です。
乱歩といえば怪奇小説ですが、この孤島の鬼は同性愛要素も入っています。
登場人物は二人。箕浦と諸戸。箕浦のほうが美少年で諸戸の方がこの箕浦に惚れています。そこに不具者製造(現代では差別言葉ですが)というおぞましい要素が加わっています。
この朗読も全文ではなく二人が洞窟に閉じ込められてから「地獄の底のめんないちどり」までというどうしてその場面を選んだのかという場面の朗読です。
どうせなら最後の諸戸のセリフを声で聴きたかった。
あの切ない諸戸の心情を。
この朗読はほぼ諸戸のセリフで進みます。狂気を抑えるような、死の淵で罪を告白する高ぶる感情を抑える話し方。
寝物語には絶対に向きません。暗闇で聞くには怖すぎる。
バックの音楽も切なさや怖さよりも不気味さを出しています。
乱歩好きならおすすめ。
森田成一さん朗読、高村光太郎
文豪とアルケミストというゲームから文豪たちの詩をそのキャラの声優さんが朗読するmp3がaudiobookにあるのを見つけました。
僕はこのゲームはやっていないのですが、単なる声優さんの朗読として聞きました。
なのでゲームの話はできません。
森田さんといえばブリーチの一護やタイバニのバーナビー、BASARAの前田慶次など。
バーナビーを除くと、この人は熱血タイプ「うぉぉぉぉらぁ!」って感じの少年漫画タイプのキャラの人だと思っていたのでどう朗読するのか気になっていたのですが、なんというか一護と同じ人には聞こえません。
地声とも違う、低音で囁く読み方。寝物語にぴったりです。
最初クレジットが間違っているのではないかと思ったほど別人に聞えます。
おすすめは「花のひらくやうに」。疲れた時に聞くとすべて放り出して眠りたくなります。
また、最も感情をこめて読んでいるのが「ぼろぼろな駝鳥」
動物園に閉じ込められた駝鳥を憐れんで怒っている詩なのですが、読み方がかなり怖いです。
一瞬静かに読んだり、「これはもう」で感情が高ぶって一瞬止まる読み方、「人間よ、もうよせ」でかすれる読み方。
たった1分9秒の中にこれだけの技が詰まっています。
ちょっと一護のがなるような声が混じっているような気がしますが、一護とはやっぱり違いますね。
バーナビーが歳をとって壮年になったらこんなダンディな低音になるかも。
飯島晶子さん「永訣の朝」朗読
この音源、どこで見つけたか覚えていないんですが朗読の中ではかなりうまいです。
初、女性の朗読を聞きました。
この「永訣の朝」は宮沢賢治の詩なのですが、賢治目線で話が進み、途中に妹トシ子のセリフが入ります。
このトシ子のセリフの読み方が切ないこと・・・
トシ子は岩手の方言で「あめゆじゅ、とてちて、けんじゃ・・・(雨雪とってきて、賢治)」と病に苦しみながら絞り出すように言うのですが、その力のない言い方、「けんじゃ・・・」のかすれ具合が本当に死に行くトシ子のようです。
バックの音楽も切なさを加えていていい演出です。
鈴木達央さん朗読「高瀬舟」感想
声優さんが朗読するCDや音源は世間にいろいろありますが、古典を読んでくれているものはなかなかありません。
しかし、海王社文庫から出ている古典シリーズはたくさんの声優さん(男性のみですが)朗読してくれています。全文じゃないのが残念ですが。
文庫本に8mmCDがついており、僕の様な若造は「こんな小さいCDどうやって聞くの?」と始め謎でしたがパソコンであっさり聞けました。
さて、たっつんといえば僕の中ではロックなイメージが強い人です。うたプリとかね。Freeのまこちゃんみたいなかわいい声は珍しいらしいですが、この朗読はこっちの優しく、囁くタイプの読み方です。ただし低音。
声優さんの朗読には二通りあって、第三者として「読み上げる」タイプ。アナウンサーというか、ナレーションっぽい読み方。もう一つが登場人物に感情移入し、声色を変えて喋る、いわゆる「演ずる」タイプ。
今回のたっつんは「演ずる」タイプの読み方。
この「高瀬舟」は主な登場人物が庄兵衛(喜助を護送する役人)、喜助(弟殺しの犯人)、弟、ばあさん。(ばあさんはしゃべらないのでおいておく)
この中で明らかに違う喋り方をしているのが喜助。
喜助の喋り方がゆっくりで優しいのです。「わたくしわぁ」のように小さい「ぁ」に低音が残る感じです。
ただ、少し気になったのが「し」の音の時空気が「ひゅっ」と鳴る点です。
もともとサ行の音は抜ける性質を持つので(人力だと最も取りにくい音素)当たり前なんですがちょっとその鳴り具合が強いかな、と。
ただしそれを補う程に落ち着いた品のある声だと思います。
庄兵衛は役人らしく低音で張ったような、はきはき喋るのに対し、罪人喜助は総てを悟ったような、あきらめたような、ゆったりとした思い出すような喋り方。
こんな声で喜助を演じられるとどうしても喜助に味方したくなります。
バックの悲しい音楽とも相まってより切ない話に感じられます。
今まで聞いた声優さんの朗読の中でも1,2を争うほど惹きこまれる朗読です。
たっつん好きならもちろん、高瀬舟に興味があるなら文字で読むよりずっと頭に入ってきます。ゆっくりな喋りなので古めかしい日本語でも分かりやすいです。
目の前に護送される船が見えてきますよ、本当に。